汚染された空気が原因で1年に700万もの人が命を落としている事実をご存じでしょうか? 今や喫煙よりも深刻な問題となっていることも一因として、世界保健機関(WHO)は大気汚染を公衆衛生上の緊急事態としています。
汚れた空気が健康を脅かす可能性
視覚や嗅覚で実際に感じとることはできないかもしれませんが、大気汚染は身近な問題であり、ゆっくりと私たちの健康をむしばんでいきます。徐々に私たち人間のエネルギーを奪い、英気を失わせ、そして命に関わりかねない様々な問題までも引き起こします。汚染された空気が原因で1年に700万もの人が命を落としている事実をご存じでしょうか? 今や喫煙よりも深刻な問題となっていることも一因として、世界保健機関(WHO)は大気汚染を公衆衛生上の緊急事態としています。まずはこの事実を頭に入れておいてください。
そして残念ながら、少なくとも当面は空気の質が改善されることはないと考えられています。世界の人口が減少する予測も、工業化のレベルが低下する見込みもありません。しかし、大気汚染の原因と健康への影響についてまずは知ることで、ダメージを軽減することが可能です。
大気汚染の原因
汚染物質を吸い込むのは屋外にいる時だけだと思われていませんか? 確かに屋外の大気中に浮遊する気体には有害なものがありますが、汚染物質は気体だけに限らず、液体、固体の場合もあります。一酸化炭素や、アスベストを含んだ建材のように住居内で発生・存在するものや、ゴキブリやネズミの糞便、たばこの煙、かび、花粉など外部由来のものも存在します。同様に戸外で接触することの多い化石燃料(車の排気)や気化した化学物質なども、非常に毒性が強く身体に悪影響です。
また、呼吸で汚染物質をとりこんでいるだけではありません。皮ふや目、耳、鼻、口などあらゆる箇所から汚染物質は侵入して、肺や心臓、脳にダメージを与えることがあります。汚染物質は分子サイズの兵器だと捉え、可能な限りご自身を守りましょう。
健康への影響
汚染された空気が体内に侵入すると、肺、心臓、脳に始まり、様々な臓器がダメージを受けます。初期反応としては、バクテリアのような異物の侵入に対して、身体が抵抗しようとして発生する炎症に似た症状を引き起こし、体内に酵素や酸が放出されます。汚染された空気に接触するほど、炎症や動脈の収縮が広がり、さらなる損傷へとつながります。空気の汚染が原因で、最終的に心臓発作を起こすケースすらあるのです。
血流に入った汚染物質を分解するために肝臓にも負担がかかるとする研究もあります。また、過敏性腸症候群や特定タイプの膀胱・大腸がんの中にも、大気汚染と関連するとみられる症例があります。
それだけではありません。大気汚染の影響は非常に広範囲に及ぶため、あらゆる臓器が細胞レベルでダメージを受ける可能性があります。その中には、男女ともに生殖能力が低減し、女性の場合は流産リスクの上昇も含まれています。さらに赤ちゃんの出生時の低体重をはじめ、発育の阻害など、乳幼児の健康においても深刻な影響をもたらします。
上述の問題の全ては、大規模な工業地域でより顕著に見られます。そして、空気のいい地域に移住することで健康面での改善が見られたとする研究結果が報告されています。
対策
この記事を大袈裟だと感じられた方も多いかもしれません。しかし、知識を持っておくに越したことはないのです。大気汚染に関しては、知識は力となります。まずは、環境省が24時間情報提供している大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」で、お住いの地域の大気汚染状況を調べてみましょう。
次に、ご自宅内での大気汚染対策を強化しましょう。方法をいくつかご紹介します。
ご自宅を清潔に保つ
言うまでもないことかもしれませんが、清潔な住まいは健康につながります。
フィルターを清掃・交換する
実感はなくても、ご自宅内の空気からホコリなどの微細な浮遊物が除去されるのはフィルターのおかげです。エアコンや空気清浄機、換気システムなどの定期的なフィルターの清掃・交換は極めて重要となります。
空気清浄機を購入する
特にペットのいるご家庭では、空気清浄機は非常に有用です。
窓を開ける
(幹線道路沿いにお住いの場合を除いて)新鮮な空気は住居内の汚染物質対策に有効です。毎日窓を開けて空気を入れましょう。
汚染された空気との接触を抑えることで、健康被害が軽減できます。大気汚染は分子のサイズが微細であっても、身体に極めて深刻なダメージを与える可能性があるので決して軽視してはいけません。